【要約】ゆとりの法則

著者

トム・デマルコ

トム・デマルコ氏のその他書籍の記事もあります。 look-good-on-paper.hatenablog.com

書籍の概要

ゆとりの法則 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解
著者はSlackこそが,企業や組織が変化に対応して生き残るカギであると説く。
「急げと言うと遅くなる」
「製品の品質は欠陥の有無とほとんど関係がない」
「目標管理はやめろ」
「内部の競争はすべて破滅的である」など,その内容は攻撃的だ。

著者は「構造化分析とシステム仕様」「ピープルウエア」などの著書で知られ,
情報システム開発プロジェクトをうまく進める方法を説き続けてきた人物だ。
この本でも,彼の言っていることには説得力がある。
組織で働いているすべての人に読んで欲しい。
特に部下を持っている人は必読。

日経ソフトウエアより抜粋(一部省略)

手にとってみた経緯

私はSIerに勤めています。
トム・デマルコ氏はこの業界では知らない人はいない方です。
デスマーチ案件に身を置くと、このタイトルの著書を手に取りたくなります。
自分の置かれている立場から、何かしら打開策を見つけたい。
その様な思いから、手に取る事にしました。

この記事は2017年にEvernoteにまとめた情報を推敲し、公開しているものになります。


特徴

対象読者

プロジェクトマネージャ
体育会系プロジェクトマネージャの部下

良い点

ゆとりがなくなる事の問題が指摘されている。
体育会系プロジェクトマネージャの例から自身の仕事振りを振り返る事が出来る。

悪い点

海外の著書の為、少々言い回しが独特且つ冗長である。

内容紹介

このエリアでは特に私が気に入っている点をポイント!として記載しておく。

ポイント! 効率が上がる様に錯覚する。
しかし、実際にはゆとりが失われる事で自由に動けるゆとりが失われる。
 → ゆとりがある社員を見つけるとプロジェクトマネージャはトンカチを持って叩きに来る。
   彼は得意気に「無駄を無くしたぜ!」と自己評価を高めるが、
   プロジェクト全体を鑑みると、そのゆとりが与えた負の面を理解しておかないと、
   その対応はプロジェクトのマイナスとなる。
   ※ ゆとりがなくなった為、緊急な対応が出来なくなる。

ポイント! 作業者は一日のうちに仕事を切り替えるという事を行っている。
この切替が多くなれば成る程、切り替える為に時間が必要となる。
実は忙しそうにしているのは、仕事を切り替える為の無駄な時間が発生している証拠なのかもしれない。
 → 集中力を削がれる行為はこの切替時間を発生させてしまう。
   上司や同僚、メンバー、顧客から呼び止められる。
   電話が掛かってくる。緊急なメールが飛び込む。
   これらの後は頭を切り替えなければならない。その時間は積み上げれば時間食いを生む。
   こうした切替時間をプロジェクトマネージャは減少させる様に施策を打つ必要がある。

ポイント! 知的労働においてプレッシャーの効果は一時的なものであり、
かければかけるほど生産性が高まる訳ではない。
急げと言われても思考は速くならない。
 → 体育会プロジェクトマネージャに多い施策だが、愚策だ。
   「この仕事はいつ終わる?もっと早く終わらせてくれ。急げ!」
   この発言をする前に自分が生業としている仕事の特性を胸に問いかけるべきだ。

ポイント! この計画はうまくいくはずだ。
だからうまくいっていないのは、一生懸命頑張っていないからだ。
さぁ、もっと頑張れ!
 → こちらも体育会プロジェクトマネージャに多い施策だが、愚策だ。
   計画が破綻している事を認められない場合にこの様な事が起きる。
   プロジェクトマネージャは予定と実績を比べ、
   必要に応じて差異分析結果から打開策を模索しなければならない。
   デスマーチになると、プロジェクトマネージャが手を動かしてキャッチアップを図る事態になり、
   こうなると更にプロジェクトは濃霧に襲われる。

ポイント! 人材を投入した場合、コストの増加とコミュニケーションパスの増加により生産性が低下する。
それでも尚、人材を投入するのは、この遅延状態をリカバリーする為に頑張っているのだ!
というアピールである。
 → 人月の神話でも語られる話だ。
   品質も納期も変えられず、仕事の方式も変えられず、作業量だけが多い場合、
   どれだけ頭の良い人でもこの施策を打たざるを得なくなる。
   ※ 何もしない。という選択肢は顧客の理解が得られないからである。

次のアクション

ゆとりの無い仕事を計画していないかをチェックしよう。
体育会系な考えや発言を行っていないかをチェックしよう。
これらを理解して業務を行うのと、行わないのとでは雲泥の差が生まれる。

ゆとりに関しては難しい考え方で、
全ての作業にゆとりを設けると、人はそのゆとりまでもフルで使い切る事が起きる。

この辺りは『ザ・ゴール』の著者であるエリヤフ・ゴールドラット氏が代替案を提示している。
こちらについては別の機会に記事としてまとめる事とする。

この書籍を読んだ方が、何かしらの仕事のヒントを得られれば、幸いです。

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