【要約】デッドライン ― ソフト開発を成功に導く101の法則

著者

トム・デマルコ

トム・デマルコ氏のその他書籍の記事もあります。 look-good-on-paper.hatenablog.com

書籍の概要

旧ソ連のモロビア共和国という国でソフトウェア・プロジェクトを運営することになったトムキンスの数奇な体験を通して、ソフト開発を成功に導く101の法則を説く。
Amazon 「MARC」データベースより抜粋

手にとってみた経緯

私はSIerに勤めています。
トム・デマルコ氏はこの業界では知らない人はいない方です。

本書はタイトルの通りこの期限に向けてどうプロジェクト運営を行えば良いのか。
そこで仕事を行う方々がどういった考えをもっているのか。
そういった事を小説の様な形で教えてくれます。

普段のソフトウェア技術本ではなく、小説を読むつもりで私は本書を手に取りました。

この記事は2014年に手書きのノートにまとめた情報を推敲し、公開しているものになります。


特徴

対象読者

プロジェクトマネージャ

良い点

読み物として純粋に面白い。
登場人物が個性的且つ、ブラックジョークもある為、
海外のエンジニアも似たような思考をやっぱり持っているのだな。と親近感を抱きます。
※ ブラックジョークは最後に掲載

悪い点

小説風に仕立てている為、ポイントだけを知るには読み難い。
今のソフトウェア開発では主流ではない内容もある為、情報の取捨選択が必要である。

内容紹介

このエリアでは特に私が気に入っている点をポイント!として記載しておく。

ポイント! 正しい管理の4つの本質
1. 適切な人材を雇用する
2. 人材を適所に当てはめる
3. 士気を保つ
4. チームの結束を強め、維持すること
 → 管理とは何か?を考える最初の問いかけになります。
   例えば、PMBOKの管理の解釈を理解していても、実態の管理はそう簡単に嵌りません。
   あれもこれもと管理項目を増やすプロジェクトマネージャもいますが、
   何の為の管理かをプロジェクトマネージャは忘れてはならない。

   私は特に「2、3、4」については常に意識しており、
   昨今のコロナ禍では新しい士気の高め方。チームの結束の強め方。を模索しています。

ポイント! Q. 生産性を短期的に高める方法は?
A. そんなモノはない。長期投資の結果である。
  だから無駄な時間を避ける事に注力せよ。
 → プロジェクトにおけるタスクは無尽蔵に増やす事が出来る。
   全ての事柄はやらないよりやった方が良いからである。
   その為、「やらない」を定める事を人は嫌がる。
   やらなかった結果、不具合があれば鬼の首を取った様に某がやって来る。
   ただ、プロジェクトマネージャはこの「やらない」を定めなければならない。

ポイント! 仕様書が曖昧なのは利害関係者間で対立が解決されてない印である。
入出力が不明瞭な仕様書は、仕様書ではない。
ただ、仕様書が粗末だとは誰も言わない。
なぜならそれは、読み手の自分だけが理解出来ないと思い込むからだ。
 → ソフトウェア開発を生業とされている方々は違和感がない話だろう。
   Inputを元にProcessを経て、Outputになる。
   そしてそのOutputは別の機能のInputになる。
   このI/Fは面白い程に不具合を生む。又、I/F変更時に揉める。
   この揉めるのをいつにするか。
   製造工程は已む無しだが、それより前で議論する方が後の自分が楽になる。

ポイント! 設計作業は全体を部分に分ける作業である。
その作業が終わらない限り部品はない。
だから設計には大量に人は要らない。
 → 上流工程は少数にならざるを得ない。
   多くの人で分担して作業を行う為の部品が出難い工程な為である。

ポイント! プレッシャーがプログラマーに与える影響が、
6%の生産性向上だけで平坦化してしまうのはなぜですか?
回答:
 プレッシャーをかけられても思考は速くならない。
                      オラク
 → ゆとりの法則にも登場する指摘だが、本書の方が出版は先である。
   オラクル氏が述べる通り、エンジニアを急かすのは止めましょう。

以下はポイント!というより、デマルコ氏のジョークがなかなかに笑えないので紹介する。

ポイント! ベリンダは直接ケノロスに話しかけた。

アリストテレス、どう思う?
 非現実的なプレッシャーでひどい目に合わされてるのに、
 どうして人が辞めないのかしら。
 ああ、そりゃ何人かは辞めるけど、
 どんなにひどい事態になってもかならず残る人たちがいるみたい。どうしてなの」

「ひねくれてるのさ。
 プログラマーは生まれつきひねくれてるんだ」

「猫みたいに」とトムキンスが口をはさんだ。

「そう、猫みたいにな。
 ほら、きみだってここにいるだろう、ベリンダ。
 だれかに非現実的な期日を押しつけられて、さあ、どうする?

 『まあいいわ、これも人生よ』ってね。
 そして、もっと非現実的な条件を押しつけられる。
 『やれやれ、つぎはなに?』ってね。どうかな」

ベリンダは同意をこめて肩をすくめた。

「たぶんそうね。プログラマーと猫」
 → これはデマルコ氏のジョークだ。

次のアクション

あなたのプロジェクトの厄介事を書き出してみて捨てられるものを考えてみよう。
体育会系なプロジェクトマネジメントを実践していないかを内省してみよう。
ブラックジョークを「それいつの時代?」と笑える様な仕事の仕方をしよう。

この書籍を読んだ方が、何かしらの仕事のヒントを得られれば、幸いです。

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