【要約】ピープルウェア

著者

トム・デマルコ
ティモシー・リスター

トム・デマルコ氏のその他書籍の記事もあります。 look-good-on-paper.hatenablog.com

書籍の概要

●ソフト開発の現場で多くの熱い共感を呼んだ名著!
開発プロジェクトで技術よりも何よりも大事なもの――それは「人」。
一人一人の人格の尊重、頭を使う人間にふさわしいオフィス、人材の選び方・育て方、
結束したチームがもたらす効果、仕事は楽しくあるべきもの、仕事を生み出す組織づくり、
という6つの視点から「人」を中心としたプロジェクト開発の大切をユーモラスに語っている。

1987年の初版発行以来、多くのソフトウエア・エンジニアの共感を呼んだ名著の改訂第3版。

Amazon 「概要部」より抜粋

手にとってみた経緯

当時プロジェクトリーダーとして数年の経験を私は積んでいました。
徐々に引っ張るメンバーの数は増え、ステークホルダーも増え、政治的な話も出てきた頃でした。
ご存知の通り、ソフトウェア開発は人月ビジネスであり「人」を無視する事が出来ません。
いかに参画メンバーのモチベーションを高める事が重要かをこの本書に私は求めました。

この記事は2015年に手書きのノートにまとめた情報を推敲し、公開しているものになります。


特徴

対象読者

プロジェクトマネージャ
プロジェクトリーダー

良い点

生産性を高める施策と、下げる施策について理解する事が出来る。
特にヒトとどううまく関係性を構築するかに悩んでいる方にはオススメ出来る。

悪い点

古典且つ、米国ならではのソフトウェア開発事情もある為、当て嵌まらない事例もある。

内容紹介

このエリアでは特に私が気に入っている点をポイント!として記載しておく。

ポイント! スペイン流価値観
この地球上には一定量の価値しか存在しない。
その為、豊かになる道は大地や民衆からいかに富を搾り取るかである。

スペイン流管理方法
要員に対して長くタダで働かせ一時間当たりの生産性を改善させれば良い。

早くヤレとせかされれば、雑な仕事をするだけで、質の高い仕事はしない。
 → タダ働きの様な文化は昨今撲滅しつつある話ではあるが、
   スペイン流の考え方は記憶しておくと良い。
   生産性のマジックに騙されない為にも。である。

ポイント! 管理者の役割は人を働かせることではなく、人を働く気にさせることである。
 → これは部下を持つ人は否が応でも意識しなければならないと感じている。
   どれだけ当人にアドバイス等を行っても本人の気持ちがなければ良い仕事は遂行出来ない。
   俺が俺がで命令形の仕事の遂行方式もあるが、その方式ではメンバーはついて来ない。

ポイント! 管理者にとっての最大の成功は「管理」などないかのように、
チームがなごやかに一致団結して働いているときである。

最良の上司とは、管理されていることを部下に気付かせずに、
そんなやり方を繰り返しやれる人である。
目に見える管理は囚人相手にすればよい。
 → 同じく管理者は何をなすべきかを問うている。
   放任主義であれと言っている訳ではなく、
   自律型のプロジェクト運営を目指しなさい。という事である。

ポイント! まじめに残業し、無業時間(残業の反動で必要になる、
生産性が上がらない時間)で埋め合わせができない人が、ワーカホリックに陥る。
ワーカホリックの患者は効率は低いが、メチャクチャに長い時間働くし、
十分なプレッシャーをかけなければ、自分の生活を犠牲にしながら働き続ける。

しかし、人生にとってそんなに大切でないこと(仕事)のために、
もっと大切なもの(家族、愛情etc)を犠牲にしていると気づいたとき、
その人はプロジェクトが終わったあとで永遠にいなくなる。
 → デスマーチが発生するとこうしたメンバーが出てしまう事がある。
   どうにかうまくやろうとして、最後に潰れてしまう。
   その居なくなってしまった事に対するコストを会社はそこまで意識していない。
   しかし、同僚の感情はそれ以上に揺れ動かされる事になる。

ポイント! プログラマーの生産性を高めるには割り込みが入らない静寂なオフィス環境が必要である。
 → この意見は半分同意で半分が反対である。
   おそらく精鋭部隊が揃っている場合は、この意見はうまく行く。
   しかし、多種多様なスキルを持った部隊の場合は、コミュニケーションが疎遠になり、
   かえって生産性を低下させるのではないだろうか。

ポイント! 人は新しいことをやろうとする時、それを良くやろうとする。
 → 新しいことに対して喜んで失敗する人はいない。
   何とか成功する様に創意工夫をするものだ。
   しかし、ある一定の水準に達した時、生産性は高止まりを起こす。
   それは成熟であると共に停滞であり、適度な新しい事は生産性の向上に繋がる。

ポイント! マネジメントにおける究極の罪は、人の時間を浪費することだ。
 → これは謝罪するより他ない程に肝に銘じなければならない。
   開発者からすれば管理者からあれこれ根掘り葉掘り聞かれるのは溜まったものではない。
   そして最悪な事に開発者の仕事が増え、あげく改善しない場合があると開発者は非協力的になる。
   管理者は何の為の管理なのか。その管理は幸せに繋がるのかを意識しなければならない。

ポイント! 変化に対する抵抗度合い
↑高
◎ 戦闘的な反対者(この変化を妨害、破壊しようとする者)
◎ 反対者(権力を失う事の恐れを持つ者)
◎ 反対者(変化が怖い者)
◎ 受身の傍観者(私には関係ないと思う者)
懐疑論者(証拠を見せろと思う者)
◎ 盲目的に忠実(ミーハー(そしてすぐに掌を返す者))
↓低
 → 何かを変える時には必ず十人十色の反応が生じる。
   私は過去に上流工程にて顧客にこう言われた事がある。
   「1ミリでも今の仕事のやり方を変える事は認めない。」
   冗談で当人は意見をしているのではなく、本気である。

   それらの勢力をどう我々が良いと考える方向へ味方にするかも腕の見せ所だけれども、
   どの様な案でもどこかに影響を受ける人がいる事を忘れてはいけない。
   ※ 『ライト、ついてますか』でも記載した通り、問題解決は別の問題を運んで来るのと同じである。
  
ポイント! 大抵の人は、自尊心を、自分の作った製品の品質(製品の量ではなく質)と強く結びつける傾向がある。
 → 傾向があるというより、ほぼそうだと同意せざるを得ない。
   それ程成果物の品質に対する指摘はその製造者の自尊心を傷つける事がある。
   人を憎むのではなく、バグを憎めとも言われるくらいに徹底しなければ、
   チームは悪者探しを始めてしまい士気が低下する。

次のアクション

◎ メンバーの働きやすい環境が整えられているか?
◎ メンバーの士気を高められる活動をしているだろうか?
◎ 人の問題を放置してはいないだろうか?

ソフトウェア開発は人による問題が顕著に現れる仕事の為、
「ヒト・モノ・カネ」なんて言われますが、「ヒト・ヒト・ヒト」くらいに考えておいた方が良いです。
一人ひとりの力は微力であり、そこをうまく結束してこそ、より良いソフトウェアが出来上がるのです。

この書籍を読んだ方が、何かしらの仕事のヒントを得られれば、幸いです。

↓クリックしていただければ励みになります!
書評、レビュー 本ブログ・テーマ
書評、レビュー