熊(リスク)に襲われないダンステクニック(書評:『熊とワルツを - リスクを愉しむプロジェクト管理』を読んでみた。)

著者

トム・デマルコ
ティモシー・リスター

トム・デマルコ氏のその他書籍の記事もあります。 look-good-on-paper.hatenablog.com

書籍の概要

「リスクのないプロジェクトには手を付けるな」。著者は冒頭でこう断言する。
リスクが大きければ,そのぶんチャンスも大きい。
リスクという熊とのダンスを楽しみながらソフトウェア開発を進めるべし,
というのがタイトルに込められたメッセージである。

本書ではまず,リスク管理が難しい理由を分析する。
どれも痛快なほど的を射ており,ソフトウェア開発者でなくても身につまされる。
その後,解決策が紹介される。説明に豊富な図や具体的な事例が使われているため,すんなりと理解できる。

Amazon日経BP企画」より抜粋

手にとってみた経緯

プロジェクトマネジメントにおいて不測の事態をいかに想定しておくか。
この観点は優秀なプロジェクトマネージャーの背中から感じ取っている。
まるでそのプロジェクトにおけるハザードマップがあるかの様に彼らは振る舞う。
ある基準に達した際、どこが危険になるのか?その時どうするのか? etc.
その勘所をこの書籍に求めました。

この記事は2017年にEvernoteにまとめた情報を推敲し、公開しているものになります。


特徴

対象読者

プロジェクトマネージャー
プロジェクトリーダー
プロジェクトメンバー

良い点

PMBOKガイドより身近な事例で熊(リスク)について述べられており、取っ付き易い。

悪い点

海外書籍のこれらの本ではお馴染みですが、冗長表現が多く読み難いです。

内容紹介

書籍の紹介に入る前に、PMBOKガイドではリスク管理をどう考えているかを記載しておく。
細かい説明は割愛するが、以下がベストプラクティスという点を理解した上で、
書籍を楽しんで読む事をお薦めします。

<計画>
 ◎ リスクマネージメント計画
 ◎ リスク識別
 ◎ 定性的リスク分析
 ◎ 定量的リスク分析
 ◎ リスク対応計画

<コントロール
 ◎ リスクの監視・コントロール

少々冗長な表現がある為、自分なりに整理した言葉でポイントをまとめます。

ポイント! まずはリスクを定義すべし。
そのリスクとは、将来起こり得る出来事で、望まない結果を生むものとする。
 → まずはリスクとは何だ?という点ですね。
   デマルコ氏は感覚的に分かり易い表現を使っていますが、PMBOKガイドで考えると、
   リスクとはそれが発生すれば少なくともスコープ、スケジュール、コスト、品質といった
   プロジェクト目標に影響を与える不確実な事象・状態の事。
   これに合致すれば何でもリスクに該当し、計画の段階でリスクが挙がらない場合は、
   そのプロジェクトについて良く理解していないと自認しなければならない。

ポイント! リスクを洗い出す際は観点で考えるべし。
 1) そのシステムはどの様な利用者、他システムと連携するのだろう?
 2) プロジェクトの要件は変わりやすいだろうか?要件を期日までに決め切れるだろうか?
 3) プロジェクト進行に必要な人材を確保出来るだろうか?
 4) 対顧客のマネジメント層と渡り合える自社のマネジメント層が準備出来るだろうか?
 5) ニアショア、オフショア、別ベンダー、協力会社といった関係者は期待通り動くだろうか?
 6) 権力を振りかざし、プロジェクト進行を引っ掻き回す人はいないだろうか?
 7) 利害関係の不一致による対立が起きたりしないだろうか?
 8) 未経験の技術や手法を無事やり切れるだろうか?
 → リスクを洗い出せと言われても、参画したばかりの状態であれば出せないはずだ。
   その為、参画したタイミングで様々な観点でどういったリスクがあるかを探し出す癖付けをしよう。
   メンバーの意思疎通が取れていない。顧客が非協力的。稼働が高い。要件が決まらない。 etc.
   この「最高の状態」からの乖離は全てメモしておくと良い。
   そのメモを元にリスクを洗っていこう。

破滅的ブレーンストーミング
1) 悪夢に絞って問題を考える。
  夜も眠れない程の問題は何か?
2) プロジェクトの最高の状態を考え、その対岸を考える。
3) 誰にも責任のない不幸について考える。
  誰のせいでもなくプロジェクトが失敗するとしたらどんな事が考えられるか。
4) 非難すべき失敗について考える。
  プロジェクトが酷い結末を迎え、それが我々の責任だとしたらどんなケースが考えられるか?
  又は、ユーザの責任だとしたら?上層部の責任だとしたら?あなたの責任だとしたら?
5) 部分的な失敗について考える。
  プロジェクトが全体として成功するが、
  ある関係者だけが不満や怒りを持つとしたらどんな事が考えられるか? ポイント!
 → こちらも先程と同様なリスク洗い出しの観点になり得る為、参考にしておこう。

ポイント! 昨日の問題は、今日のリスクである。
 → 二度ある事は三度ある。ではないが、一度起きた問題は、いつ再発してもおかしくない。
   それは何も対策をしていない場合は、
   「さぁ、もう一度問題よいらっしゃい!」と言っているのと同じだ。
   ただ、割り切る事もプロジェクトマネジメントでは必要であり、
   発生した際の影響度が軽微であれば、リスクを許容するアプローチもありだろう。
   こうした事を検討する為に、リスク管理表に昨日の問題は書いておくこと。

ポイント! 企業における最大のリスクとは?
価値の低いプロジェクトに無駄な労力をつぎ込み、
価値の高いプロジェクトを逃して機会コストを負うことである。

果敢にリスクを取るには効果という誘因がなければならない。
どの程度のリスクをとるかは、どの程度の効果を得られるかによって決めるべきだ。
 → 管理職の方々には言いたいことは分かるが、そうは言ってられない事態もある。と言いたくなる。
   社内が待機要員で溢れるならば、その解消を否が応でもやるしかない。
   理想はデマルコ氏の観点で良いのは間違いはない。

次のアクション

今の仕事やプライベートでも良いので、リスクと思われる事を洗い出してみよう。
その作業だけでも漠然とした不安から脱却出来るはずだ。

そしてその後、そのリスクが顕在化した際にどうするかを考えてみよう。
もうこれでプロジェクトやあなたの軸が出来るはずだ。

熊(リスク)に襲われてもどうにかなるダンステクニックはもう身に付いている。

この書籍を読んだ方が、何かしらの仕事のヒントを得られれば、幸いです。

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